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始まりとこれから
「ふぁ……」
首筋にキスをされ、変な、甘えたような声が出た。
「や!なんか、変……」
「変じゃないよ、すごく可愛い」
羞恥に頬が熱くなる。
これって、もしかして――
今更ながら気づいた。
「だめだよ。止まらないって言ったでしょ?」
見透かしたような口調。
抗うにもベッドに押し付けられた体は動かない。
ズボン越しに撫でられた。
「ん!」
息が詰まる。頭がクラクラする。
もう、なにもわからない――。

桜井さんの手が、僕のシャツのボタンを器用に外していく。
僕はパニック状態で、涙で霞んだ目で桜井さんを見上げるのが精一杯だった。
その目は、桜井さんの情欲を刺激するだけということも知らずに。
シャツを開く間も首筋、鎖骨、肩口とキスを降らす。くすぐったくて思わず首を竦め、とまどったような声が漏れる。
そのまま、口唇が降りてくると、胸の飾りを軽く挟んだ。
「あ!」
鋭い、それでもどこか甘い声が漏れた。
戸惑ったように、自分の胸に顔を埋める男を見下ろす。
「さ、桜井さん?」
桜井さんは僕の声に耳を貸さず、驚きに堅くなった尖りを舐め上げた。
「あ、ん」
自分の声じゃないみたいな声が漏れる。
ぴちゃぴちゃと猫がミルクを舐めるような音を立てて、舌先で尖りを転がす。
「や!い…や…。なんか変……」
自分の体の変化に戸惑いを感じ、桜井さんの髪に手を絡めるが、力が入らず、柔らかい髪を弄ぶだけになってしまう。
下腹部が熱くなっているのがわかる。
いくら初恋が遅いからって、知識だけはある。
でも、想像とぜんぜん違う。
知らない!こんなの知らない!!
「う…ん、いやっ」
我慢できなくて身を捩ると、桜井さんはやっとのことで顔を上げてくれた。
くすっ喉奥で笑った。
「樹。見てごらん。こんな可愛くたってるよ?」
悪戯な指先が、僕の胸の敏感な部分を弾く。
「ん!」
そんな小さな事で、僕は鋭く息を呑んだ。
「さ、くらいさん……」
「一哉」
「え?」
「か・ず・や。呼んでごらん」
「かずや?」
「そう。もう1回」
「かずや…」
名前を呼び合うだけで、安心する。
こんなことも知らない。
「やだ。恐いよ」
桜井さんの手が僕のソコに伸びてきて、僕は思わずその手を掴んでしまった。
「どうして?」
「だって……」
「はじめてだから?」
カッと頬が熱くなるのを感じた。
口唇を噛んだ僕を見て、桜井さんがまた笑みを零す。
「大丈夫だよ」
「だって、わからない……」
「うん。だから、全部を俺に任せて」
「……」
「大丈夫。痛くしないし、気持ちよくしてあげるから」
あまりにも恥ずかしい言葉に身を捩って抵抗しようとしたけど、桜井さんの手は、器用に僕のズボンのボタンを外し、ファスナーを下げる。
「う、んっ」
下着越しに撫でられ、鼻にかかった声が漏れる。
「ほら。もうこんなに熱い」
な、なんで、そんな恥ずかしいこと言うの!?
声を出したら、さっきみたいな声しか出ないような気がして、僕は口唇を噛むのが精一杯だった。
「!!」
桜井さんの手が、下着の中に入ってきて僕を直に握る。
「どうして、声出さないの?」
恥ずかしいからに決まってる!!
「聞かせてよ、樹」
ねっとりと耳を嬲られる。
桜井さんの指が優しく僕の口唇をなぞる。
そのくすぐったいような優しい感覚に、思わず息が漏れた。
「ひゃう!」
変な声が上がる。
僕はソコに熱くぬめった感触を受け、思わず下を見下ろした。
気が狂いそうな感覚。
桜井さんが僕のソコを舐めていた。
一気に体中にマグマのような熱が駆け巡る。
「い、やぁ、…くらいさ…ん」
「一哉」
「!」
くぐもった声が余計、ソコに響く。
「やぁ…あ、うんっ。っずや…いや、あつい……」
舌っ足らずな声しか出ない。
どくどくと脈がソコに集まっていくのがわかる。
その強烈な感覚は僕の思考を朦朧とさせてく…。
後は、その熱に翻弄されるだけだった――。

「だ、だ…め……。っちゃう!」
「いいよ。いって」
「やだ…」
そんな……。だって、口の中にしちゃう!
「いって、樹。一番、可愛い顔見せて」
「っやぁ……んぅ。あ、あ、あ、あぁ――!」
僕の体を何かが通り抜け、解放される。
ぼやけた視界の中。桜井さんが何かを飲んでいるのがわかる。
その形のよい口唇の端から、ツッと白濁としたものが伝う。
それは、僕が出したもので……。
それを認識した途端、どうしようもない羞恥が襲った。
そんな!人の口の中にしちゃうなんて!
それを飲んじゃうなんて!!
「いや!」
弛緩した体は思うように動かなくて、桜井さんに背を向けるのが精一杯だった。
羞恥にもがく僕の体に背後から桜井さんが僕の腰を引き寄せる。
「いや!離して!」
「どうして?」
桜井さんの手が前に回り、出したばかりのソコを握る。
「ん!」
過敏になっている神経を直接握られ、鋭く息を呑んで動けなくなった。
「誘ったのは、樹だよ」
え?
戸惑いが浮かぶ。
誘った僕が?
「そう。無防備な泣き顔も、知らない男に平気についてきて、ラブホテルなんかに入っちゃうのも。こうやって、可愛いトコを男の目の前にもってきちゃうことも」
その時になって初めて、僕の格好がどんなかがわかった。
うつ伏せになって、腰を高々とあげて桜井さんの目の前にお尻を晒してしまっている格好。
「ふ……ぅん!」
羞恥を感じる暇もなかった。
桜井さんが、僕の背骨の終点をねっとりと舐める。
前を弄られたときとは違う感覚が僕を襲う。
さっきよりも、もっと熱くて、恥ずかしくて、粘着質な感覚。
「あっ……」
桜井さんがお尻の狭間を指先で撫でる。
きゅうっと締まるのがわかる。
「ここで、俺を受け入れて」
へ?そこって?そこは、だって……。
「男同士の場合はここを使うんだよ」
ええ―――――っ!!!
大パニックを起こした僕は逃げようと暴れるけど、体に力が入らない。
桜井さんがゆっくりとお尻の丸みを撫でながら、ソコを晒していく。
「ひっ!」
ひやっとした空気が触れたと思ったら、次の瞬間、熱く濡れたものがそこをねっとりと触れた。
「やだ!さくらいさん!そこ、汚い!」
「一哉だよ、樹」
「か、かずや。そこ、だめ!」
「駄目。やめない」
熱い吐息がソコにかかる。
ぬるっと何かが入り込んできた。
「いや――!やだ、恐い!」
暴れても桜井さんの腕から逃れられない。
ぴちゃぴちゃと、音が鳴る。
それがますます僕に羞恥を与える。
頭が真っ白で、何も考えられない。
ただ、桜井さんが僕に与えてくれる感覚だけがすべてだった。

さっき出したばかりなのに、また堅くなっている。
「っつ!やぁ……な、に?」
舌の代わりに今度は何か細いものが入ってくる。
「大丈夫。俺の指だよ」
それが、僕の後ろのソコをかき回す。
「やぁ…い、たい……」
「痛くないよ。ほら」
前も握られ、後ろもかき回される。
「んんっ。い、やぁ……」
「すごいね。俺の指を締め付けてくる……」
「あ、んっ」
桜井さんの指が僕の中の一点を触れた途端、ものすごい熱が走った。
「ここだね」
「あっ、あ、っぅん!いやぁ……」
立て続けにそこを擦られて、いきそうになる。
「もう1本、入れるよ」
「あ…っめ…で、ちゃう……」
「まだ、だめ」
「ひっ!!」
前を強く握られ、衝撃で後ろを締め付けてしまう。
桜井さんの指を僕の中でありありと感じてしまう。
「や、だぁ…も、抜いて……」
僕は必死に首を巡らせて、背後の桜井さんを見た。
僕を見下ろす桜井さんの目が、視線が僕を貫く。
苦しい体勢のまま、桜井さんの口唇を受け止めた。
強引に舌を絡まされて、息ができない。

「……めん」
え?何?
「ごめん、樹、もう止まらない」
さっきと同じセリフなのに、ふざけた調子だったさっきとは違う。
何かに追いつめられているように切羽詰まっている。
「ひ、ぅ!」
ずるりと指が引き抜かれた。
「!!」
安堵の息をつく間もなく、熱く濡れて堅い何かが入口に触れた。
「!う、あ!」
灼熱の固まりが僕を貫く。
「う、あああああああっっ!」
激痛が僕を襲う。
逃げたいのに体が竦んで動けない。
「うっ……」
背後で桜井さんが低く息を詰める。
息ができない。
間断なく痛みが襲う。
叫び声を上げてるつもりなのに、声は出ていない。
ただ、喉がひゅうひゅう音を立てるだけ。
「……き。樹」
気を失いかけている僕を桜井さんの言葉が繋ぎ止める。
でも、激痛は去らない。
体が小刻みに震える。
「樹。力抜いて……」
「うぐぅ」
息が詰まる。
桜井さんが動く度に激痛が走る。
また、視界が暗くなっていく。
「樹!口開けろ!息をするんだ!窒息するぞ!」
桜井さんの指が僕の口をこじ開ける。
「ふ、はっ」
堰を切ったように空気が流れ込んでくる。
その勢いに噎せ、咳込んだ。
「樹……樹……」
桜井さんの切ない声が、耳を打つ。
「ごめん、樹。こんな……ごめん……」
後ろがズキズキと脈を打つたびに痛む。
桜井さんの手が萎えた僕をそっと撫でる。
かすかに肩が跳ねた。
「か…ず……・」
一生懸命、名前を呼ぼうとしても掠れた声しか出ない。
桜井さんの手が僕を煽る。
「う…んっ」
ショックで冷えていた体の奥底からじわりじわりと熱が戻ってくる。
徐々にソコが堅くなってくる。
「あっ…う…」
先の方に爪を立てられて、思わず後ろを締めつけてしまう。
その瞬間、僕の中にいる桜井さんをまざまざと感じてしまった。
「あ、あ、あぁ――」
甲高い声が僕の口から漏れた。
ざあっと一気に背筋に震えが走った。
自分が灼熱の焔の中に放り込まれたような感覚。
あれほどの激痛を凌駕する感覚。
たぶん、いや、間違いなくこれは、快感だった。
「やぁ…、か…ずや、怖い……」
自分が自分じゃなくなりそうで、未知の感覚に恐怖を感じる。
「樹!」
「やだぁ……」
「大丈夫。怖くないから」
「怖いよぉ。いやだ……抜いてぇ。変になる……」
「大丈夫だから。樹は樹だから。……動くよ」
言うなり、僕の中の桜井さんがずるりと抜ける。
「あ、ん……っや、熱い…変になっちゃうぅ――」
「いいよ。変になってごらん。俺はそれが見たいんだよ、樹」
背後の桜井さんの息も荒い。
再び、桜井さんが奥までくる。
「やあっ、あ、んっ」
熱い―――。
背後から響いてくる粘着質な音が更に僕の熱を煽る。
荒い息とともに囁かれる僕の名前。
姉さんとは違う、熱い声。
「あ、あ、っん、くっ……ん、いやぁ――っ」
「っ!樹っ!」
「あ、んっ……やぁ!……っちゃう!」
瞼裏に閃光が煌く。
「い…いよ、いって。俺もすぐいく……」
「あ、あぁぁぁぁぁっ―――」
灼熱が解放され、そのままブラックアウトした。
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